D旗たなびく

忘却甚だしく、メモ代わりにちょっと書くだけ。 コメントは受け付けていません。

2017年10月

台風22号は昨夜大雨を降らせていつの間にか通り過ぎていった。雨台風の去った夜空は星がさんざめき、オリオンが南にくっきりとその雄姿を煌かせていた。冬の星座があまり輝くと急に風が強くなる。
晴れあがった朝なのに北風は台風通過時より強く、台風一過の暖かさを望んだ気持ちを萎えさせる。
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本日、木枯らし1号なり。
東京周辺と近畿地方にしか出ない「木枯らし1号」。定義としては10月下旬から11月にかけて8m以上の北風が吹くことを言い、これをもって冬の入口とする。

でも、まあ晴れてるし、風さえしのげばそれなりに暖かいだろうとリルとマリーナへ行く。
台風21号はたいへんな爪痕を残していったが、台風22号の暴風は大したことはなかった。ほとんどのフネは大丈夫だったが、逆に木枯らし1号に苛まれているフネがあった。
南風からの対策はしてたが北の強風に対しては準備不足だったのだろう。
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  カンカン鳴ってるよ。

ポンツーンにバウをしこたまぶつけてるフネや、ビミニトップがバタバタしてるフネ、とくに多かったのはブームカバーのフネでメインセイルが飛び出してはらんでしまっていたり、カバー自体がはらんでしまって破けてしまったりしていた。
ブームカバーはスタックパックのように骨となるバテンが入っていないから、シートで丸ごとグルグル巻きにしないと危ない。
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 またなんかやるの?

かく言う私も、スタックパックの骨を1本海にくれてやったので、ちょっと気がかりだったが従前のバテンが寸足らずにも拘わらず頑強に守っていてくれた。
で、早速セイル屋から届けてもらったカーボンファイバーの棒を取り付ける。
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が、従前のバテンが奥の方まで入り込んでしまってなかなか取り出せない。
しまったあ、細紐でも付けておけばよかった。
シャックルキーとバテン棒で少しづつ取り出すだけで30分もかかった。

送り届けられた白い骨は逆に15cm長い。
カナノコで切断して、やすりで磨く。
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係留中とはいえ、折からの強風でフネがかなり揺れる。ブローが来ると立っていられない。
つんのめってうっかりまた落とさないように、骨の一端にシートをグルグル巻いて命綱。
よし、なんとかきっちり入った。

ついでにリーフィングシステムを若干変更するためにメインセイルを半分あげにかかる。
これがちょうどクローズホールドくらいの受け風なので、なかなか上がらない。
また肩が少々痛くなる。が、これもなんとか完遂。
なんでこんな日に汗かいてるんだ。

ここでちょうど正午。
オーニングを風よけにしてリルとオニギリ。
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  なんだよその期待感に満ちた目は。

昼を食べたら、ジブセイルの擦れた部分をリペアテープで補強しようと思っていたが、この風ではとても展開する気にはなれずしばらくキャビンで休憩。
なんとなく汗が乾いてきたが、ちょっと悪寒が…
まずい、風邪引きそうだ。今週はガン検診と特定健診が入ってる。
おい、帰るぞ。
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どんよりした雲に覆われ、闇真を縫って散歩しだすと雨がぱらつく朝。
家人はなく、またリルと籠城かとテレビでメジャーリ―グのワールドシリーズを見ていた。ダルビッシュが2回もたず4点アストロズに献上しノックアウト、ドジャースは前田をリリーフに立てた。
Bud
   (画像は無関係)
あーあ、と思っていたら電話が鳴った。
「駅のそばにいるんですけど、ちょっとお時間いただけますか?」
ナオト氏だった。

昨夜もアダチ君から電話があってナオト氏のディンギーの話をしていたばかり。やはり気になるのでナオト氏のいる秋谷までリルを連れて行こうかなどと考えていたところだった。
近くのコンビニで待ち合わせ、自宅までお連れする。
氏が先週から私に渡したい物があると言ってくださっていた。それをわざわざ持ってきてくれたのだった。
突然の氏の出現に、どう慰めようかとか励まそうとか、道々考えていたが、できるだけ話題を避けていつも通りのおしゃべりでいこうとリルと相談したが、リルは悟って逆にテンション上がり気味。ナオト氏に会った途端にその無駄吠えが止まらない。
今日のリルはそのまま一日テンション上がりっぱなしだった。バカめ!
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  また、オマエか。

私に作ってくれたのは、写真立てだった。
それは勿論、氏がナンシー号の制作で出た端材によって作られたもので、マリン合板を三重に積層してあった。
これを作っていた頃にはまだナンシー号は栄光のうちにあったはず。
残されたこの記念品はまた、その魂を伝えるものだと思い、ありがたく拝領した。
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額の中には古き時代の白鳥亭の写真が飾られていた。ポストカードだという。
これはこれでいいのだが、氏が帰ったらナンシー号の写真を入れておこうと思った。

氏が我が家に来るのは初めてで、私もまったく準備をしていなかったから、インスタントコーヒーくらいしか出せなかった。
私の英国行脚のアルバムなど見せ、雨と同じくポツポツと話す中で、氏が前を向いて歩き始めたことを知る。ちょっと安堵した。

これから材木店に行く予定だから暇するという氏を無理矢理車に押し込み、さして遠くはないその材木店に向かったが生憎本日休業。その近くにあるもう一つの材木店に寄って所望の材を当たったが空振り。そうこうするうちに昼近くになったので、
「タンメンでも食べに行きませんか」とまた無理強い。
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    車においてけぼりのリル

寒くなると無性にタンメンが食べたくなる。
ところが目当ての「十八番」も休業。”ついてない”時っていうのはどこまでもついてないな。
浅田次郎の「憑神」じゃないが、ナオト氏、どこぞの古びた祠を拝んできたんじゃなかろうか。
で、結局関内近くまで行き一品香のタンメンを食べることに。
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氏にはちょっと塩分が強いようだった。

来年夏に桧原湖で”特別な”カヤックを浮かべることを約束する。
食後に伊勢佐木町のゲートでお別れをした。

その後、雨降りとなって欲求不満のリルと少しミナトをドライブ。
やかましいぞ。ギャンギャン鳴くな! 
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でも、ナオト氏の顔を見て少し安心した。ちゃんとご飯も食べてるようだし、体の不具合もなさそうだ。エネルギー充填中。
私は今、氏から頂いた写真立てを自室の壁のどこへ置くかを検討中。

PS. 海に沈んだスタックパックの骨、本日代替品がセイル屋から送られてきた。



この二日間はよく晴れて、秋の装いを取り戻した。
10月なのにほとんど乗れなかったJollyhotにも波を切って走らせたいし、毎日雨で牢獄暮らしだったリルも遊ばせてやりたい。そんな風に思っている私自身、陽光を浴びながらとびっきり楽しいことを考えたいという感じだった。
教授のディンギー、タカハシの不調、それに加えてボランティアで7か月毎週顔を合わせていた徐さんの離脱など、この10月は全く明るい話がなかった。唯一、母が元気でいてくれたことが何よりだが。

昨日の新聞によれば、ナオト氏のフネが置いてあったマリーナだけでなく、高潮高波でさらわれていったのは湘南全般に及ぶらしい。
江の島の岩屋洞窟、鎌倉材木座海岸の漁師小屋など、定置網等凡そ防波堤のないところは甚大な被害になったという。津波と同じような被害だ。

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昨日は多少白波が立つ順風で、リルと楽しく帆走できた。憂さ晴らしというか、これが普段の生活と言うべきか、潮風をいっぱい吸い込んで飛沫にまみれた。そうだ、海は決して災害の源ではない。
この時季特有のキラキラした水面はまるで宝石のようだった。
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人は海にへばりついて生きる。
私もリルもいつも海の上が一番落ち着く場所だ。決して飽きない場所でもある。そして時間の贅沢を味わうことができる。
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息子が誕生日祝いにくれた自撮り棒とかいうやつで撮ってみた。
なんだか七面倒な代物だが、あいつはあいつで親父のくだらない記録写真をそれなりに楽しんでいる。
ここのところ家には寝に帰るだけの生活をしてるので一緒に乗れないが、今度乗る機会があったらツーショット、いやスリーショットで撮ってやろう。
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風が南東から北東に振れたので、リルとゆっくりランチはできなかった。
往きも帰りもクローズで、片手でサンドイッチを口に放り込むのがやっとだったから、帰港後コクピットでポワーンとしながらモーツアルトを聴き、リルとバナナなどを食べる。
夕暮れも早くなったな。
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今朝起きたら体中が痛い。
雨で籠城生活が続いたからすっかり体がなまってしまった。
実家の世話を手早く終えたはずが、マリーナに着いた頃には昼近くになっていた。
また週末に台風が来るという。当面はまた雨が続く。腰も膝も痛いが、せめて機走の一つもしてやろうと思った。マックに寄ってテイクアウトする。
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マリーナで出港届を出して外に出ると、赤い帽子ミス・リーがやってきた。
月照号を陸揚げしてるという。ラダーのピンドルに亀裂が入った件だ。
ご主人の大佐と、メンテスタッフのHさんがちょうど話をしていた。
どうやらラダーを抜いてピンドルを外し、アメリカの職人に同じ素材で同じものを鋳造させるようだ。
「あとで下架するので、その時ちょっと手伝ってもらっていいですか」と頼まれごと。
頼まれごとは試されごと。二つ返事で引き受ける。

とは言え、情けないことに筋肉痛で我が愛艇に乗るのにも、「イテテ」などと言ってる始末。
とにかく、昼飯にしよう。
コックピットでゴンチチを聴きながら、リルと昼マック。
なんでマックばかり食うのかというと、リルがナゲット好きだからで、私は仕方なく食べていると言った方がいい。ナゲットの衣だけ私が食べて中身はリル行になるから、私はいつも気持ち悪くなる。
てな事をしてたら、ミス・リーから電話。Jollyhotで一緒にお昼をしたいと言う。
って、この時点で私のハンバーガーはわずか一口を残すのみ。
むー。しばらく一口分だけ手に持って夫妻を待っていたが、リルはその欠片をずっと睨みながら涎をダラーン。これはお互いにとって良くない状況だからミス・リーたちが来る前に口に放り込む。
リルにとっては漂流した船での最後の豆一粒みたいな感じになったので、乗り込んだ夫妻がナゲットを持っているのに気づくや、完璧なる集中力で凝視。
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   オマエ、食いすぎ!

結局、夫妻がその噴き出る願望に屈しリルはナゲットをゲット。それもかなりの量に及んだので後々夕飯は減量にされることになる。
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その後リルと機走。今日もきれいだ。
またしばらくこの秋の青とはお別れかあ。
適当にその辺をトコトコ走らせていたら、ミス・リーからメールで下架が3時になったと連絡が入る。
惰眠を貪っていたリルを起こし、ゆっくり帰港。

頼み事は、ラダーを外した月照号をバースまで曳航してもらうので、ポンツーンで待ち受けて欲しいとのこと。
月照号をバースに入れるには180度の回頭が必要になる。ラダーがないと確かに厄介だ。ご近所さんにも声をかけたらしい。
リルとJollyhotで先回りして、バースで待つ。
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  ここどこ?

ご近所のオーナーと短い会話をしながら待っていたが、なかなか姿を見せないのでリルとその辺を散歩。イーストハウスの方は滅多に来ないから、リルは興味津々。
やがて、ポールフックを持ったナンシーがごとくバウに仁王立ちしたミス・リーのフネが曳かれてきた。
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Hさんの巧みな曳航と二本のロープとフックで声を掛け合いながらなんとか作業終了。
ヨット乗りはみんなで助け合う。

でも「死と栄光号」があればなあ。俺たちもっとうまくやれるのに。
さ、帰ろう。






曇天の嫌な気配。
ナオト氏のナンシー号を引き摺って、ほとんど眠れないままリルに起こされる。
このまま、この天気の中ボケーっとしてるとまたいろいろ思い浮かんできてしまうので、リルとマリーナへ。
我が家に届いたスタックパック、どんなものかとマストカバーだけ付けてみる。
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いやあ、こりゃ大きい。ブーム下のバンドを締めてもブームバンクの辺りがポッカリ開いてしまう。
こうなると、全部つけてみたくなる。
勿論、一人でやるには無理があるのは分かっている。
が、家内が手伝うと言ってくれた今度の日曜は横浜マラソンのためほとんど終日交通規制が敷かれ、マリーナに行くには相当朝早く出なければならないことが昨日沿道に立てられた看板で分かった。
実はナオト氏がナンシー号事件の前の日に助っ人を買って出てくれたのだが、家内が手伝ってくれるからと遠慮申し上げたばかり。
朝早くから深夜まで学校に行ってる息子も見込みなしだし、ここは白石康次郎なみに一人でやるかあ。
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メインセイルをバンドして、今使っているスタックパックを外しにかかる。
恐らく一度も外したことがないであろうレイジージャックを外し、ブームの余計なシート類を取り、ブームのグルーブから骨組みを取り除いたスタックを引き寄せる。これが実に渋い。
問題は次、ブームのグースネックを外さなくてはならない。
これが結構しんどい。折れピンを取り、ピンドルを抜くだけなのだが、錆と塩で固まっているし、ブーム自体の重さがあるのでメインハリヤードでブームを吊り上げながら引き抜く。
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ペンチと金槌は必須。
で、図工2の私が一人でやると、こういうことになる。

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 でも、血豆で収まった。

それから、シリコンスプレーをグタグタ塗り付けて、新しいスタックをブームに通す。
生地が固い分するする入る。
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次にエンドをブームに結び、スタックを広げていく。
グースネックの取り付けは先にドライバーを差し込むと位置合わせしやすい。
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スタックパックを広げたら、骨となるアクリル棒を入れ、形を整える。
従前の骨はバテンの長尺物だったが、今回は3本つなぎのアクリル棒。ジョイントはただ差し込むだけなのだが、最後の1本がはずれ、あれよと言う間に海底深くに沈んでいった…
ゲーッ!

仕方ないから片方だけ従前のバテンもどきを使うが、長さが15cmほど足りない。
とは言え、すでに2時近く。昼飯も食べてないし、リルはじーっと動けないでいる。
次になんとかしよう。
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  退屈なんですけど。

骨の1本や2本でうろたえる必要はない。なんだかんだと言っても、帆走や操船にはほとんど影響ない。
まあ、一人でやったのがいけない。
寸法が足りてると思いこんで、レイジージャックを取り付けにかかる。
従前のスタックは長方体に近い形だったが、今度のは三角錐に近い。
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なーるほど、これでマストカバーが大きいわけが分かった。
って、これを探るには犠牲が大きすぎた感がある。

レイジージャックのテンションを調整しながら、出来上がり。
図工2の我輩としては、4時間くらいは毎度の事。流血を見なかっただけでも上出来だろう。
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後は、リーフシステムを付け直して出来上がり。
なんか寒いぞ。

マリーナは本日定休。
リルとマックに寄って帰宅。
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セイル屋に電話しなきゃなあ。

明け方に台風21号は通り抜けたが、その暴風雨はたいへんなものだった。
テレビからは横浜の土砂崩れや、交通機関のストップが映し出されて、選挙結果どころではなかった。
台風一過で気持ちよく晴れたので、リルを連れてマリーナへ行こうとした時、ナオト氏からメールが届く。
「マリーナ壊滅」
併せて、ナンシー号のバラバラになった画像が添付されていた。形があるのはトランサムのみである。
ご本人の許可を得てないので、画像を載せられないが、その美しいトランサムだけが荒れ果てたマリーナの野原に哀しく置かれていた。

絶句…
構想2年、制作に3年。進水式からまだ半年も経ってない。舵社の「KAZI」に特集として取り上げられたのは先月だ。
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マリーナ笠島はすでに営業してなかったが、施設としては一部残っていた。そこを地権者と相談してホームポートにしたのだった。スロープはあったが堤防はなかった。
台風の直撃で江の島では波高10mを超えたというニュースを昨日見た。そんな波があのマリーナに入ったらすべて根こそぎ持っていかれてしまう。

残骸となった画像を見て、どう返事をすべきか分からなかったので、
「なんと言ったらいいか…」としか書けなかった。
その後、何度かメールをやり取りしたが、結局慰めも励ましもできなかった。
エンドウやタカハシが聞いたら、びっくりするだろうな。

取りあえず、自分のフネもチェックしないと。そう思いながらリルとマリーナへ行く。
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台風が過ぎ去って、すでに北北西の風が入っていた。ブローで15m/sを超える強風だったので赤旗が立っていた。
事情が分かってないリルは、久しぶりのマリーナと日差しでご機嫌だった。そんなリルの楽しそうな顔がショックを和らげてくれる。
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Jollyhotはオーニングのショックコードが1本はずれているくらいで問題はなかったし、エンジンも快調だった。ビルジもあの大雨を考えれば微々たるものだ。
周囲を見渡すと、マリーナスタッフがせっせと動いている。
南風の台風と雨で緩んだ舫綱が、今度は真逆の北風に押され、多くのフネがバウをポンツーンにぶつけているからだ。
私の対面のボートなどはアンカーチェーンが緩んで、舳先のアンカーがポンツーンの板をガリガリ削っていた。
ご近所さんの話では昨夜は30m/sの風にてんてこ舞いだったらしい。中にはフォアステーを止めてるピンが錆びていてマストが倒れそうだったフネもあったそうな。
土曜には雨中のオープンレースがあり、参加艇のオーナーが三々五々やってきては濡れ切ったスピンなどを乾していた。
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  今日も出ないの?

すっかり湿ったキャビンのソファなどを乾し、ナオト氏の依頼でビーチボーイズ号を見に行くと、案の定バウがポンツーンに当たっていたので舫を締めなおす。
スタッフも忙しそうなので、少しだけお手伝い。
なんだかんだ言っても、YBMは二重の防波堤があるし、スタッフがぐしょ濡れになって安全を守ってくれる。施設もスタッフも申し分ない。

運動不足のリルとマリーナを散歩。
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  風に立つリル。

歩きながら、ナオト氏の心情を想う。
私に何ができるだろう?
自分が当事者だったら…
むー、しばらくそっとしておいて欲しいかな。
それがどんなフネだって、事故や災害で自分のフネを失うことの悲痛さは他人には推し量れない。
ましてや、ナオト氏のナンシー号は少年時代からの夢。英国から図面を取り寄せて自分一人で作り上げた力作。彼だけしかその重さを知ることはない。
ジョンがツバメ号を座礁させて船体に穴を開けてしまった時、子供心にそのジョンの気持ちを痛感し、2,3日読書を続けることができなかった。
それでも、ツバメ号は復活できるほどの損傷を負ったに過ぎない。
ナンシー号は…

ナオト氏はこの夏、高齢の愛犬を亡くしてもいる。
私のような軽佻浮薄な人間がどうして声などかけられるだろうか。
喪失感というのは、決して薄れることがない。
気持ちが前に向くまで、傍にいるだけしかできない。能がないな。


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