ガーン!
Jollyhot存亡の危機。
一昨日、もうもうとした黒煙と墨汁のような冷却排水を噴出させて、とうとうエンジンがかからなくなった。
無理してスタートボタンを何度か押すと、心もとなく始動するのだがすぐに止まってしまう。
最初からスロットルを前進に入れ、何度も挑戦するがニュートラ位置まで戻すと、また止まる。
こりゃ、大事だぞ。

てな訳で、一番手短な吸気と排気を点検するところから始めるのが普通。(というか深刻な事態から目をそらす)
エアエレメントは3月末に交換したばかり。で、今日は排気と排水が混ざり合うミキシングエルボーを点検する。
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ラチェットがあれば猿でも外せるが、エルボーとエキゾースト管がシリコンで補強したらしく、なかなか抜けない。
CRC556などを吹きかけて回しながらやっとの思いで外した。
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うへ、カーボンびっちり。
だが、排気も排水も通らないというほどではない。

エンジン側を鏡で見てみる。
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 煤がひどいが、それほど動脈硬化がある訳じゃない。
指でさらっとふき取ると、ちょっと湿った感じが…ヤバっ!ここに水気があってはならない。
いやーな予感がしてくる。
エルボーをつついて、洗剤で洗っていると、なにか微妙な穴が開いているのに気づく。
試しに冷却水取入れ口にホースをつけ、水を送ってやると…
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げーっ!エンジン側に水が飛び跳ねてるじゃないの!
こうなるとエルボー交換は当たり前だが、シリンダーヘッドの損傷やシリンダー内への錆付も最悪考えられる。
エンジン換装?無理無理。
もとより、貧乏船主は財政上の理由から今年度限りの引退を覚悟している。とても換装などはできない話。
上架してオーバーホールしてもヘッドを交換したら50万円近くかかる。
廃船か… せっかくみんなで船底塗装したばかりなのに。
年度いっぱい動かぬ屋形船か…
取りあえず海王さんに連絡。

さっそくメカニックのHさんと連絡を取ってくれて、午後になってHさんがやってきてくれた。
不動作の症状とエルボーの話をすると、
「それはちょっと厳しいですねえ。エルボーは一因ですけど、黒煙原因はもっと深い所にあります。5年以上、このフネに乗るなら、換装をお勧めします」
Hさんはメカニックの中でも腕はピカ一で、いつも多忙だ。何度もお世話になっている。
技術も信頼度も高いが、なによりその人柄が好きで、訳もなく話掛けたくなる気心が知れた人だ。
「いやあ、この一年もってくれれば…」
「えっ、やめちゃうんですか。もう少し頑張りましょうよ」
そんな風に言ってくれるのだ。
症状チェックの前に、コクピットで我が家の財政状況や家庭事情などを聞いてくださった。
彼の技術からすれば、私の小舟などはさした仕事ではない。
エンジン音痴の私がYBMに来て間もない頃「ディーゼルエンジン講習会」で講師をしていた彼と会ってから3年。
毎年何度も手にとり足を取って教授してくださった。そのお陰でずいぶんと知識を得ることができた。

Hさんは私の話を聞きながら、自分のフネの話などもしてくれる。多忙な方だからなかなか自分のフネに乗ることさえままならないらしい。
「でも、降りたら二度と持てませんからねえ」
修理の話はさておいて、どうしたら陸に上がらないで済むかを示唆してくれるのだ。ありがたいことだ。

「ご事情はよく分かりました。換装なんて言ってすみませんでした。今できる最善の道を考えましょう。オーバーホールで上架したら50万円ほどかかりますから、ここでシリンダーヘッドを交換しましょう。ただシリンダー室の損傷やシリンダー自体にクラックがあったらどうしようもないですから、その時はその時でまた相談しましょう。開けてみないと分かりませんが、シリンダーヘッドの交換なら20万円かからないと思います。だから、JOLLYHOTさんも頑張りましょうよ。」
なんか胸にぐっときた。すみません、貧乏船主で。

で、さっそく修理にかかるという。一旦ヤードに戻って工具類を持ってきた。今日できることは今やるという彼の姿勢は共感すら覚える。
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なによりびっくりしたのは、ヘッドを外すためにエアフィルターを外した時だった。
一番大丈夫だと思っていたエアエレメントがオイルでグチャグチャになっていたのだ。どうやっても給気ができない。Hさんによると逆噴したのだという。
「こんなにひどいのは初めて見ました」と笑っている。
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プーリーを手で回して圧縮と爆発のタイミングを耳で聞いている。
「圧縮時に漏れる音がしますね」
たしかに耳を傾けているとシューという小さい音が漏れる。気密が保たれていないのだ。
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Hさんは私の目の前で、一つ一つ教えてくださる。私もそれを真剣に聞く。こんな授業は受けられるもんじゃない。
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とうとう、シリンダーヘッドを抜いた。
シリンダー室にエルボーから逆流した水滴が蒸気化したものが作ったか、わずかな赤錆があった。
「どうですか?」
「むーん、頑張ってもらいましょう。2,3年はなんとかね」
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冷却水経路についた結晶をそぎ落とす。見た目にはびっしりついてるが、Hさん曰く「まだましですね」
シリンダー裏のカーボンも丁寧に漉き取っていく。早い!
ガスケットも交換予定。私が回せなかった塩で固着したドレインも抜き取り、これも交換予定。
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明日計測して問題があればノズルチップも交換する。
勿論、エルボーもエアエレメントもだ。
今日はここまで。明日、シリンダーヘッドやガスケットを据え付け圧縮比を計測して締め付けるからこのままにしておいてくれと言う。
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作業中に入った電話で、一息つく間もなくHさんはイーストまでビルジポンプの動作異常を直しに行った。
その後ろ姿に私は何度も頭を下げた。

明日は午後にでも組み立てが終わって試運転ができるという。
また全部作業工程を見るつもりだ。