D旗たなびく

忘却甚だしく、メモ代わりにちょっと書くだけ。 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: 友達

「あったかくなったら行くよ」
と言いながら、もう暖かいも暑いも通り越して寒い。
ターホーに約束した伊豆高原のリゾート(彼の職場)、忘れていたわけではなかったが、彼の仕事が忙しく連絡してもなかなか都合がつかなかったこともあり、寒くなってやっと約束を果たす日がやってきた。しかも、連絡をしたのが昨日のこと。
彼が同期の同僚の死去を知って横浜にやってきたのが2月だから、ずいぶんと日が空いたものだ。
IMG_5446
  大島が近くに見える
リルと泊まれて遊べる施設があるホテルだから、一緒に連れて行きたかったが、じっくり膝を交えて話をするにはちょっと邪魔だし、また長いドライブだからリルにとっては苦痛。
次は家族でゆっくり泊りがけで来ることにして、私は約束を守るために「走れ メロス」。
IMG_5441
  伊東マリンタウン

閑散期とは言え、彼は普通に仕事中。人気のある”わんわんP”だから、11時チェックアウト後に着き、15時のチェックイン前には辞去しなくてはならない。
途中、伊東マリンタウンで時間調整して11時15分ぐらいに着いた。

なんだかんだ言っても伊豆は暖かい。横浜と2℃くらい違う。
大島、利島、新島とくっきり見えるほどの秋晴れ。やっぱりリルも連れてくればよかったかなあとちょっと後悔。
フロントでマネージャーである彼を呼んでもらう。
昨日会ったように気さくな顔で迎えてくれた。
客がまだたくさんいるロビーで海を見ながら話す。
若手社員の待遇やら、年金やら、ヨットやらその他もろもろ。1分として話が途切れない。
珈琲をすすり終わる頃には大きな窓からの陽光で暑いくらいだったので、ついでに施設見学。
IMG_54442

「チェックアウトしても、客はそのまま居座ってみんな遊んでいくんだよ」
確かに、ロビーにもドッグランにも小さい犬たちがキャンキャン吠えて嬉しそうに跳ね回っていた。
ナオト氏の末っ子じゃないが、陸より水が好きなラブ達が時折ざぶーんとプールに飛び込んでいたりする。
IMG_5445

「あのままレストランに来るからねえ」
とまあ、これじゃ昼もなかなか休めない。
私と八ヶ岳で働いていた時も、まともに昼飯をとったことなどなかったっけ。
いつもチェックイン前のわずかな時間に物を無理矢理胃に流し込んだっていう感じだったからなあ。

彼はすでに定年退職してる。
今は再雇用という形でこの宿泊施設を任されている。いろんな意味で彼はこのグループ会社では有用な人物なので、会社側が辞めさせてくれない。それでも就業規則上は一度定年になる。
別れ際に、
「辞めさせてくれないけど、辞めたら何していいかわからん」とも言っていた。
「キャンピングカーでも買って日本中回ってみるかな」
それでも、40年働いてきてすっかり仕事と生活と生きがいが一緒になってる、なんだか職人みたいだった。なにより楽しそうだ。
「無理に辞める必要はないよ」
そう言って別れた。

IMG_5464

帰りもさらに晴れて気持ちいいドライブとなった。
網代や小田原に寄ってたくさん土産を買った。っていうか、自分が食べたかったものを買い込んできた。
夕方に帰宅。
リルは土産の干物や昼に食べた鯖の味りん干の匂いを嗅ぎつけ、その置いてけぼりをなじり、私に体当たりをしてくる。疲れてはいたけど散歩に連れて行き、伊豆のリゾートの話をしてやるのだった。
6FA9A9D4-A6D4-471A-9B49-B199F36771D9
  邪智暴虐の王だ…

今度みんなで行こうな。


週末は秋の船底塗装。
IMG_5400
息子は休みなく学校に出張っており、寝に帰るだけで役に立たないから、また友人タカハシと後輩エンドウに助っ人を頼む。
いつもは三日でやりあげるが、今回は軽くやろうと土曜、日曜の二日間。
毎回「きれいなもんじゃないですか」と言われ、実際船底に関してはほとんど問題なく、だからさらっとやるつもりだったが、上架してみるとペラがひどい状況だった。
IMG_5401
  これでも半分フジツボを落とした後。

いつも塗料を頼んでいる海王さんからもペラだけはちゃんとやった方がいいというアドバイス得ていたが、確かにこれは3年ぶりの有様。
今年は台風や雨が多い夏で、あまり乗艇できなかったことに加え、やたらと水温が高かった。台風が10月に上陸したのも海水温が高かったせいだ。海洋生物の異常繁殖か。
キールやラダーにもフジツボがかなりついていて、剥離するのに時間がかかる。
IMG_5402
   友人タカハシによる高圧洗浄

ペラの被膜塗装は下地塗り2回、仕上げ塗2回で、それぞれ気温によって乾燥時間が決まっている。
それで2日間は最低必要になるのだが、たまたま土曜日は20℃を超える気温があってなんとか日暮れ前には仕上げ剤1回を塗布することができた。
友人タカハシにはハルの汚れ落としを、家内には船底の重点箇所の塗装を任せる。
IMG_5405

わざわざ土浦から出てきてもらったタカハシには申し訳ないが、シンナー臭がする作業用のいでたちでは混み合ったアウトレットのレストランは憚れるので、出来合いの弁当にしてもらう。
買いに行った家内が、アウトレットで見つけたというフィッシュアンドチップス(F&C)を持ってきた。
IMG_5431

おお、懐かしい!
かつて英国をバックパッカーとして渡り歩いた私には、安くてボリュームのあるF&Cは毎日の常食だったし、家内と廻った時も2日に一度は食べていた。
魚のフライにたっぷりのフライドポテト。それに塩とビネガーをふるだけのシンプルなファストフード。当時だいたい1ポンド2,30ペンスほど、日本円でだいたい300円くらいで腹を満たすことができた。
今も昔もなにしろ貧乏。
B&Bでガッツリと朝食を食べたら、目的地(ランサムの世界)を目指して列車に乗ったりバスに乗ったりしていた。あとはひたすら歩くだけ。食堂車のパサパサのサンドイッチが4ポンドもしたから、どれだけF&Cがバックパッカーの味方だったか分かると思う。
F&Cとパブだけはどこの町に行っても必ずあったし、なにしろ味に無関心なお国柄なのでちょっとしたレストランで出される料理もとても美味いとは言えなかった。
今ではどうか分からぬが、英国ではインド料理が一番うまかった。
で、そのF&C、はっきり言ってまずい。油も古ければ魚のフライもカリカリ、だいたいは鱈の身が主流だが、場所によってはサワラや鯖だったりするし、うっかりするとアマゾン辺りの淡水魚だったりもする。要はあくまでFishはFish。鱈のフライとは謳ってない。店任せだが看板に偽りはない。
ポテトもジャーマン風のものもあればフレンチフライのやたら長いものもある。揚げたてに出会えばラッキーで、2度揚げ3度揚げなんてのはざら。油でギトギトになっているが、楊枝の1本もくれないから食べた後は手も唇もベタベタになる。油が古いと吐き気すら催す。
そのF&Cも、紙トレーに盛ってくれるところはまだましで、新聞紙を手巻き状にして無造作に放り込み、下端をぎゅっと絞って渡されたりする。
ギトギトのベタベタに自分で塩をパラパラかけ、ビネガーを振り回す。新聞紙の下の方は油とビネガーにまみれて持つ手さえ油っぽく、しかもインクが溶けてチップスが少し黒ばんでいたりする。
こいつと一緒に炭酸の利いたシュウェップスかなんかを飲むと、胸焼けはするし、気持ち悪くなったりもする。唯一の利点は腹持ちがいいということだけ。

家内の買ってきたF&Cは、まるで女王陛下への献上品のごとく柔らかで油切りもよく、ビネガーはまろやかでケチャップとタルタルソースまで端に盛ってあった。
なにか別の料理を出されたようで、びっくりした。
違う、違う、F&Cはこんな上品じゃない。と思いつつしっかり食べた。

仕事を終えて家に戻ってからタカハシといつもの居酒屋で一杯。相変わらずうまそうに飲むねえ。

翌日曜はエンドウが助っ人。
IMG_5408

人にはなにか取り柄が一つあるもので、カーマニアのエンドウのパフ掛けだけは脱帽だ。
前日の多少の粗を見事に埋めてくれる。しかも速い。
鏡面仕上げにヤードのピーター・ダックことKさんからもお褒めの言葉。
よかったな。うまくすれば転職できるぞ。
IMG_5403
  ピーター・ダックと謎の車

下架は15:30。船台のあった塗り残し部分を最後宙ぶらりんに吊り上げられて塗る。塗り終わったらだいたい30分ほどの乾燥時間をもらう。
が、塗り終わってから10分ほどするとスタッフたちがポンツーンにバタバタ走り出した。
私のフネと同型のマイレディが曳航されてクレーン近くに係留されてきた。
IMG_5414

ビルジポンプを持って走ってきたスタッフを掴まえて話を聞くと、どうやら浸水してるらしい。
「床上5cmまできてるんですよ」
原因も浸水個所も不明だという。
かくして、我がフネは15分で下架させられることになる。
IMG_5415

今日は2日間留守番をさせられたリルとマリーナへ行く。
さすがに、体のあちこちが痛いし、鈍重な疲れもあったので、微風ながら帆走はやめ、機走だけした。
IMG_5428
   オニギリ買ってないよ~

船底塗装後の走りは全然違う。ペラ周りの付着物も完全除去されて回転数も復活したし、シャフトのバランスも元に戻ってガタガタしなくなった。
充電をかねて八景島まで行く。
IMG_5430

敢えて長く乗るつもりはないので昼飯を持ってこなかった。リルはそれでちょっと不服そう。
いつもは八景島の内湾でのんびりオニギリ食べるからね。
2時間ほど走ってバッテリー充電。
リルのためにフネ洗いを後回しにして、レストラン街へ。
でも、結局またF&Cを買ってきてしまった。
IMG_5433
  じーッ。ごっくん。

どこぞの大統領じゃあるまいし、ケチャップなんて要らないよ。
でも、タルタルをかけてもらった。店の彼は本当に英国人なんだろうか?

タカハシ、エンドウ、お疲れ様! どうもありがとう。









どんよりした雲に覆われ、闇真を縫って散歩しだすと雨がぱらつく朝。
家人はなく、またリルと籠城かとテレビでメジャーリ―グのワールドシリーズを見ていた。ダルビッシュが2回もたず4点アストロズに献上しノックアウト、ドジャースは前田をリリーフに立てた。
Bud
   (画像は無関係)
あーあ、と思っていたら電話が鳴った。
「駅のそばにいるんですけど、ちょっとお時間いただけますか?」
ナオト氏だった。

昨夜もアダチ君から電話があってナオト氏のディンギーの話をしていたばかり。やはり気になるのでナオト氏のいる秋谷までリルを連れて行こうかなどと考えていたところだった。
近くのコンビニで待ち合わせ、自宅までお連れする。
氏が先週から私に渡したい物があると言ってくださっていた。それをわざわざ持ってきてくれたのだった。
突然の氏の出現に、どう慰めようかとか励まそうとか、道々考えていたが、できるだけ話題を避けていつも通りのおしゃべりでいこうとリルと相談したが、リルは悟って逆にテンション上がり気味。ナオト氏に会った途端にその無駄吠えが止まらない。
今日のリルはそのまま一日テンション上がりっぱなしだった。バカめ!
IMG_5282
  また、オマエか。

私に作ってくれたのは、写真立てだった。
それは勿論、氏がナンシー号の制作で出た端材によって作られたもので、マリン合板を三重に積層してあった。
これを作っていた頃にはまだナンシー号は栄光のうちにあったはず。
残されたこの記念品はまた、その魂を伝えるものだと思い、ありがたく拝領した。
IMG_5279
額の中には古き時代の白鳥亭の写真が飾られていた。ポストカードだという。
これはこれでいいのだが、氏が帰ったらナンシー号の写真を入れておこうと思った。

氏が我が家に来るのは初めてで、私もまったく準備をしていなかったから、インスタントコーヒーくらいしか出せなかった。
私の英国行脚のアルバムなど見せ、雨と同じくポツポツと話す中で、氏が前を向いて歩き始めたことを知る。ちょっと安堵した。

これから材木店に行く予定だから暇するという氏を無理矢理車に押し込み、さして遠くはないその材木店に向かったが生憎本日休業。その近くにあるもう一つの材木店に寄って所望の材を当たったが空振り。そうこうするうちに昼近くになったので、
「タンメンでも食べに行きませんか」とまた無理強い。
IMG_5281
    車においてけぼりのリル

寒くなると無性にタンメンが食べたくなる。
ところが目当ての「十八番」も休業。”ついてない”時っていうのはどこまでもついてないな。
浅田次郎の「憑神」じゃないが、ナオト氏、どこぞの古びた祠を拝んできたんじゃなかろうか。
で、結局関内近くまで行き一品香のタンメンを食べることに。
IMG_5280
氏にはちょっと塩分が強いようだった。

来年夏に桧原湖で”特別な”カヤックを浮かべることを約束する。
食後に伊勢佐木町のゲートでお別れをした。

その後、雨降りとなって欲求不満のリルと少しミナトをドライブ。
やかましいぞ。ギャンギャン鳴くな! 
IMG_5050

でも、ナオト氏の顔を見て少し安心した。ちゃんとご飯も食べてるようだし、体の不具合もなさそうだ。エネルギー充填中。
私は今、氏から頂いた写真立てを自室の壁のどこへ置くかを検討中。

PS. 海に沈んだスタックパックの骨、本日代替品がセイル屋から送られてきた。



この二日間はよく晴れて、秋の装いを取り戻した。
10月なのにほとんど乗れなかったJollyhotにも波を切って走らせたいし、毎日雨で牢獄暮らしだったリルも遊ばせてやりたい。そんな風に思っている私自身、陽光を浴びながらとびっきり楽しいことを考えたいという感じだった。
教授のディンギー、タカハシの不調、それに加えてボランティアで7か月毎週顔を合わせていた徐さんの離脱など、この10月は全く明るい話がなかった。唯一、母が元気でいてくれたことが何よりだが。

昨日の新聞によれば、ナオト氏のフネが置いてあったマリーナだけでなく、高潮高波でさらわれていったのは湘南全般に及ぶらしい。
江の島の岩屋洞窟、鎌倉材木座海岸の漁師小屋など、定置網等凡そ防波堤のないところは甚大な被害になったという。津波と同じような被害だ。

IMG_5258

昨日は多少白波が立つ順風で、リルと楽しく帆走できた。憂さ晴らしというか、これが普段の生活と言うべきか、潮風をいっぱい吸い込んで飛沫にまみれた。そうだ、海は決して災害の源ではない。
この時季特有のキラキラした水面はまるで宝石のようだった。
IMG_5260

人は海にへばりついて生きる。
私もリルもいつも海の上が一番落ち着く場所だ。決して飽きない場所でもある。そして時間の贅沢を味わうことができる。
IMG_5256
息子が誕生日祝いにくれた自撮り棒とかいうやつで撮ってみた。
なんだか七面倒な代物だが、あいつはあいつで親父のくだらない記録写真をそれなりに楽しんでいる。
ここのところ家には寝に帰るだけの生活をしてるので一緒に乗れないが、今度乗る機会があったらツーショット、いやスリーショットで撮ってやろう。
IMG_5263

風が南東から北東に振れたので、リルとゆっくりランチはできなかった。
往きも帰りもクローズで、片手でサンドイッチを口に放り込むのがやっとだったから、帰港後コクピットでポワーンとしながらモーツアルトを聴き、リルとバナナなどを食べる。
夕暮れも早くなったな。
IMG_5265

今朝起きたら体中が痛い。
雨で籠城生活が続いたからすっかり体がなまってしまった。
実家の世話を手早く終えたはずが、マリーナに着いた頃には昼近くになっていた。
また週末に台風が来るという。当面はまた雨が続く。腰も膝も痛いが、せめて機走の一つもしてやろうと思った。マックに寄ってテイクアウトする。
IMG_5266

マリーナで出港届を出して外に出ると、赤い帽子ミス・リーがやってきた。
月照号を陸揚げしてるという。ラダーのピンドルに亀裂が入った件だ。
ご主人の大佐と、メンテスタッフのHさんがちょうど話をしていた。
どうやらラダーを抜いてピンドルを外し、アメリカの職人に同じ素材で同じものを鋳造させるようだ。
「あとで下架するので、その時ちょっと手伝ってもらっていいですか」と頼まれごと。
頼まれごとは試されごと。二つ返事で引き受ける。

とは言え、情けないことに筋肉痛で我が愛艇に乗るのにも、「イテテ」などと言ってる始末。
とにかく、昼飯にしよう。
コックピットでゴンチチを聴きながら、リルと昼マック。
なんでマックばかり食うのかというと、リルがナゲット好きだからで、私は仕方なく食べていると言った方がいい。ナゲットの衣だけ私が食べて中身はリル行になるから、私はいつも気持ち悪くなる。
てな事をしてたら、ミス・リーから電話。Jollyhotで一緒にお昼をしたいと言う。
って、この時点で私のハンバーガーはわずか一口を残すのみ。
むー。しばらく一口分だけ手に持って夫妻を待っていたが、リルはその欠片をずっと睨みながら涎をダラーン。これはお互いにとって良くない状況だからミス・リーたちが来る前に口に放り込む。
リルにとっては漂流した船での最後の豆一粒みたいな感じになったので、乗り込んだ夫妻がナゲットを持っているのに気づくや、完璧なる集中力で凝視。
IMG_52692
   オマエ、食いすぎ!

結局、夫妻がその噴き出る願望に屈しリルはナゲットをゲット。それもかなりの量に及んだので後々夕飯は減量にされることになる。
IMG_5272

その後リルと機走。今日もきれいだ。
またしばらくこの秋の青とはお別れかあ。
適当にその辺をトコトコ走らせていたら、ミス・リーからメールで下架が3時になったと連絡が入る。
惰眠を貪っていたリルを起こし、ゆっくり帰港。

頼み事は、ラダーを外した月照号をバースまで曳航してもらうので、ポンツーンで待ち受けて欲しいとのこと。
月照号をバースに入れるには180度の回頭が必要になる。ラダーがないと確かに厄介だ。ご近所さんにも声をかけたらしい。
リルとJollyhotで先回りして、バースで待つ。
IMG_5273
  ここどこ?

ご近所のオーナーと短い会話をしながら待っていたが、なかなか姿を見せないのでリルとその辺を散歩。イーストハウスの方は滅多に来ないから、リルは興味津々。
やがて、ポールフックを持ったナンシーがごとくバウに仁王立ちしたミス・リーのフネが曳かれてきた。
IMG_5277

Hさんの巧みな曳航と二本のロープとフックで声を掛け合いながらなんとか作業終了。
ヨット乗りはみんなで助け合う。

でも「死と栄光号」があればなあ。俺たちもっとうまくやれるのに。
さ、帰ろう。






明け方に台風21号は通り抜けたが、その暴風雨はたいへんなものだった。
テレビからは横浜の土砂崩れや、交通機関のストップが映し出されて、選挙結果どころではなかった。
台風一過で気持ちよく晴れたので、リルを連れてマリーナへ行こうとした時、ナオト氏からメールが届く。
「マリーナ壊滅」
併せて、ナンシー号のバラバラになった画像が添付されていた。形があるのはトランサムのみである。
ご本人の許可を得てないので、画像を載せられないが、その美しいトランサムだけが荒れ果てたマリーナの野原に哀しく置かれていた。

絶句…
構想2年、制作に3年。進水式からまだ半年も経ってない。舵社の「KAZI」に特集として取り上げられたのは先月だ。
IMG_3033

マリーナ笠島はすでに営業してなかったが、施設としては一部残っていた。そこを地権者と相談してホームポートにしたのだった。スロープはあったが堤防はなかった。
台風の直撃で江の島では波高10mを超えたというニュースを昨日見た。そんな波があのマリーナに入ったらすべて根こそぎ持っていかれてしまう。

残骸となった画像を見て、どう返事をすべきか分からなかったので、
「なんと言ったらいいか…」としか書けなかった。
その後、何度かメールをやり取りしたが、結局慰めも励ましもできなかった。
エンドウやタカハシが聞いたら、びっくりするだろうな。

取りあえず、自分のフネもチェックしないと。そう思いながらリルとマリーナへ行く。
IMG_5152

台風が過ぎ去って、すでに北北西の風が入っていた。ブローで15m/sを超える強風だったので赤旗が立っていた。
事情が分かってないリルは、久しぶりのマリーナと日差しでご機嫌だった。そんなリルの楽しそうな顔がショックを和らげてくれる。
IMG_5148

Jollyhotはオーニングのショックコードが1本はずれているくらいで問題はなかったし、エンジンも快調だった。ビルジもあの大雨を考えれば微々たるものだ。
周囲を見渡すと、マリーナスタッフがせっせと動いている。
南風の台風と雨で緩んだ舫綱が、今度は真逆の北風に押され、多くのフネがバウをポンツーンにぶつけているからだ。
私の対面のボートなどはアンカーチェーンが緩んで、舳先のアンカーがポンツーンの板をガリガリ削っていた。
ご近所さんの話では昨夜は30m/sの風にてんてこ舞いだったらしい。中にはフォアステーを止めてるピンが錆びていてマストが倒れそうだったフネもあったそうな。
土曜には雨中のオープンレースがあり、参加艇のオーナーが三々五々やってきては濡れ切ったスピンなどを乾していた。
IMG_5154
  今日も出ないの?

すっかり湿ったキャビンのソファなどを乾し、ナオト氏の依頼でビーチボーイズ号を見に行くと、案の定バウがポンツーンに当たっていたので舫を締めなおす。
スタッフも忙しそうなので、少しだけお手伝い。
なんだかんだ言っても、YBMは二重の防波堤があるし、スタッフがぐしょ濡れになって安全を守ってくれる。施設もスタッフも申し分ない。

運動不足のリルとマリーナを散歩。
IMG_5157
  風に立つリル。

歩きながら、ナオト氏の心情を想う。
私に何ができるだろう?
自分が当事者だったら…
むー、しばらくそっとしておいて欲しいかな。
それがどんなフネだって、事故や災害で自分のフネを失うことの悲痛さは他人には推し量れない。
ましてや、ナオト氏のナンシー号は少年時代からの夢。英国から図面を取り寄せて自分一人で作り上げた力作。彼だけしかその重さを知ることはない。
ジョンがツバメ号を座礁させて船体に穴を開けてしまった時、子供心にそのジョンの気持ちを痛感し、2,3日読書を続けることができなかった。
それでも、ツバメ号は復活できるほどの損傷を負ったに過ぎない。
ナンシー号は…

ナオト氏はこの夏、高齢の愛犬を亡くしてもいる。
私のような軽佻浮薄な人間がどうして声などかけられるだろうか。
喪失感というのは、決して薄れることがない。
気持ちが前に向くまで、傍にいるだけしかできない。能がないな。


このページのトップヘ